パラサイト 半地下の住人 視聴感想文

気になっていたのをAmazon Primeでようやく観た。ネットのレビューだと評価はいろいろだったけど、私は面白かったしすごい作品だなって思った。社会問題を描きつつ、面白くまとめて、余計な説明セリフを入れずにさりげないワンシーンで設定を描き、そして伏線の張り方とその回収が見事。

前半は半地下の住人であるキム家族が、高台に住む裕福なパク家族に寄生していく様子が描かれる。正直前半が一番面白い。半地下の住人であるキム家族は長男ギウが家庭教師として紹介されたことをきっかけに、失業中の家族全員がパク家に就職する手段が秀逸。長男ギウは大学生と身分を偽るために、妹ギジョンが学生の証明書を偽造する。ギジョンをアメリカ帰りの美大生と偽ってギウが紹介する。ギジョンはパク家専属運転手をカーセックスの嫌疑がかかるよう罠を仕掛けて解雇されるよう仕向けた上、親戚の運転手という触れ込みで父を紹介する。パク家より以前から住み込みで働く家政婦を、アレルギーを利用して結核に見せかけクビに追い込み、母を家政婦として就職させる。一連の手際がまぁ見事。学生証やら名刺やら偽造したり、仲介業者を装ったり、妹ギジョンが特にすごい。で、長男ギウは参謀役。計画にない突発的な出来事には弱いけど、計画を立て、実行させる能力がものすごく高い。逆に両親は突発的な出来事に臨機応変に対応するし、演技力もなかなか。子どもたちを大事に思っているのもわかる。だからこそ最後ああなっちゃったんだけど。それにしても、経歴は詐称しているし、両親は前の従業員を追い出して職についているけど、能力に関しては家族全員がパク家に認められるレベルだったんだよね。それでもギウの家庭教師が決まるまでみんな内職以外は無職だったとは。

K-POPも韓国流の美容も嗜まないから、韓国社会について疎く、初めて知る実情も多かった。
タイトルにもなっている「半地下」。実際映画を見るまでよくわからなかったんだけど、これは確かに半地下。窓の外がもう屋外の道路。立ちションしようとする酔っぱらいに住宅の衛生環境が脅かされる。パク家からすればものすごく違和感のある、独特の臭い。洪水対策なのか床よりはるかに高いところにあるトイレ。当然家全体も狭い。住宅価格が高騰している韓国都市部では、かつての防空壕が住宅に転用されているらしい。半地下に住んでいる人は多いというけど、作中でも大雨で下町は水没しているし、かなり劣悪な環境なんだろう。対して、パク家の住む高台は豪邸が立ち並び、防犯カメラも完備され、下町が水没してみんなが避難所で大騒ぎしている間に、息子のサプライズバースデーとしてガーデンパーティー。上と下との徹底した対比がすごかった。地上に住む恵まれた人々。半地下で能力があるのに貧困に苦しむ人々。物理的な上下が社会的な上下も如実に表しているし、半地下よりもさらに社会的に困窮もしくは罪を犯すと完全な地下に堕ちる、と。

パク家もキム家も四人家族。追い出された前運転手のことを話す父と兄に対して、キム家の妹ギジョンは「私たちのこと1番に考えてよ!」って酔って駄々こねるけど、パク家ダヘとダソンは一体どんな関係なんだろう。ダヘはダソンの「芸術家気取り」に対してかなり嫌悪感を示していたし、ギウにも訴えていた。パク社長も夫人もダソンの奔放さには困りつつも、おもちゃを買い与え、わがままを聞き、甘やかすというか、ものすごく構っているけどダヘにはそうでもない。もちろん、かなり年齢差もあるし、手のかかり方も違うけど。ギウとギジョンはかなり仲がいいようだったから、なおさらダヘとダソンの隔たりが気になってしまった。ダソン、モールス信号も理解できるし、追い出された家政婦となぜかずっと連絡とっているし、なんなら例のお化けも見ているし、宣伝ポスターでも絵が大々的に飾られているし、明らかにキーパーソンだよね。なのにダソン自身の考えとか全然見えてこなくてモヤモヤする。伏線がすごく張り巡らされている映画だから、考察すればなんか出てきそう!